《カーネーション、リリー、リリー、ローズ》
Carnation, Lily, Lily, Rose by John Singer Sargent
1885-1886, Tate Britain, London
この絵は、アメリカ人の画家ジョン・シンガー・サージェント(1856年〜1925年)によって描かれました。サージェントはフィレンツェで生まれ、フィレンツェ、ローマ、そしてパリで美術教育を受けた後は、主にロンドンとパリで活躍しました。上流社会の人々の優雅な肖像画を多く描きましたが、晩年は風景画も描くようになりました。
Self-portrait by John Singer Sargent
1906, Le Gallerie degli Uffizi, Firenze
この絵には、夕暮れに提灯を持つ少女が二人描かれています。モデルは、サージェントの友人の子どもたちで、サージェントは髪の色が明るい子を選んだそうです。日本から輸入されたと思われる提灯や背後のヤマユリから、当時、ヨーロッパで流行していたジャポニズムの影響があると考えられます。
ヤマユリ(日本のユリ)
この絵のタイトルは、ジョゼフ・マジンギ(1765年〜1844年)が歌った『汝、羊飼いよ、告げよ(Ye Shepherds Tell Me!)』という歌の中にある歌詞「彼女の頭には花冠、頭にまいたカーネーション、リリー、リリー、ローズ」から来ています。これは、花の女神フローラがかぶっている花冠(花の冠)についての歌です。
カーネーションとローズ
1885年、サージェントはテムズ川を下りながら、この絵のヒントを得たといわれています。彼は、自然の光を正確にとらえようとして、毎日、夕暮れの紫の光に包まれる時間に絵を描いたそうです。こうして、翌年《カーネーション、リリー、リリー、ローズ》は完成しました。
元々は、長方形の横に長い絵でしたが、サージェントは左側を60センチ切り落として、作品を正方形に近づけたそうです。そのため、少女たちの背が高く見えるようになっています。
参考
文:Naoko Ikegami
画像:パブリックドメイン
(2024.6.7)