天狗
鬼の次に紹介する妖怪は「天狗」です。天狗は山に住む妖怪として知られて、赤い顔と高い鼻が特徴的です。また、高下駄をはいて、翼を持ち、空を飛ぶことができると言われています。
歌川国芳 心学稚絵得「我慢の鼻」
天狗の持ち物として、羽団扇と金剛杖があります。羽団扇は、鳥の羽で作った団扇で、これで火や風をおこします。金剛杖は、お寺をまわる巡礼者などが持つ木製の杖です。
山に入って厳しい修行をする修験道を志す人たちは、超自然的な力を取得したと考えられ、山伏と呼ばれるようになりました。中世(11世紀後半~16世紀後半頃)以降、人々は山で起きる不思議な現象(おそらく天候による自然現象)を山に住む天狗の仕業だと考え、天狗を山の神と考えるようになりました。
山伏
江戸時代に神格化されていった天狗は、羽団扇で風を操り、火をおこしたり、消したりできる神様とも考えられました。例えば、静岡県浜松市の秋葉山で祭られている神様秋葉大権現と同一視されるのは、天狗の「三尺坊」です。三尺坊は、不思議な力を持って火難を救う力を得たと言われています。天狗は人を惑わせたり、風などをおこす妖怪として知られていますが、厄除や魔除、さらには開運などのご利益をもたらすとも考られました。
天狗には、いろいろな種類があります。鼻の高い「鼻高天狗」が一般的ですが、鳥のくちばしのような口をしている「烏天狗」と呼ばれているものもあります。さきほどの、源義経に剣術を教える天狗を、江戸時代の絵師、歌川国芳は烏天狗に描いていますが、月岡芳年は鼻高天狗に描いています。
歌川国芳 程義経恋源一代鏡三略伝第二
烏天狗(鎌倉)
月岡芳年 舎那王於鞍馬山学武術之図
鼻高天狗(京都鞍馬)
月岡芳年は「芳年武者无類相模守北条高時」で、酔っぱらった北条高時が踊っていたところに天狗、背中に羽がある山伏、くちばしのある生き物が現れ、一緒に踊り始めた様子も描いています。
月岡芳年 芳年武者无類相模守北条高時
最後に、日本語のことわざに「天狗になる」というのがあります。これは、自分がしたことを自慢したり、自分を過大評価して傲慢な態度をとったりすることを言います。天狗の鼻が高いことから「鼻が高い」という自慢する様子と結びついてできた言葉です。否定的な意味で使われることが多く、例えば「最近、田中さんは仕事がうまくいって、ちょっと天狗になっているね。」というように、田中さんがいないところで周りの人が田中さんの話をするような時が多いです。
鬼に続き、天狗も日本語の表現の中に使われていますね。