定食屋へ行ったら
私は会社へ行くとき、たいていお弁当を作って持って行く。そのほうがお金がかからないし、好きなおかずが食べられるから。でも、今日はいつもより起きるのが遅くなって作れなかった。
たまには会社の近くのレストランに食べに行ってみよう。会社へ向かう電車の中で、いい店があるかスマホで調べてみた。
「あ、ここ、いいかも」
安くて人気がある店を見つけた。会社から歩いて5分ぐらいのところにある「ごはんや」という定食屋だ。ここなら食べに行っても午後の仕事が始まる前にもどれそうだ。
おしゃれなカフェを探していたんだけど、和食中心の定食屋もいいかも。行ったことがないから楽しみだ。
昼休みになった。
私は会社を出て、スマホで地図を見ながら「ごはんや」を探した。
「ごはんや」はすぐに見つかったけど、入口の前に人が大勢並んでいた。少し待たなければならないようだ。
「あのう、何分ぐらい待たなければなりませんか」
私はお店の人に聞いてみた。お店の人は
「そうですね、10分から15分ぐらいだと思います。こちらにお名前と人数を書いてお待ちください」
と言った。
私は時計を見た。急いで食べれば午後の仕事に間に合いそうだ。
それで、名前を書いて並んだ。
こんなに人が並んでいるのに本当に15分ぐらいで店に入れるかな。もし15分以上待っても名前が呼ばれなかったらどうしよう。待つのをやめてコンビニでお弁当を買って会社で食べようかな…。
心配しながら待っていたけど、10分ぐらいで名前が呼ばれた。よかった。
「これをお願いします」
私はお店の人にメニューを見せながらA定食を注文した。
「かしこまりました。少々お待ちください」
「お待たせいたしました」
料理がきた。「やっと食べられる!」と思ったけど、運ばれてきたのは私が注文した料理じゃなかった。私が注文したA定食は焼き魚だけど、テーブルの上にあるのは肉じゃがだ。肉じゃがは確かB定食のはずだ。店の人がまちがえたようだ。ううん。もしかしたら私がはっきり「A定食」とか「焼き魚」とか言わなかったから、店の人が「これ」をB定食だと思ったのかもしれない。
どうしよう。「注文したのとちがうから換えてください」と言ったら、換えてもらえるかな。でも、そうしたら時間がかかって昼休みが終わるまでに会社にもどれなくなるかもしれない。A定食もB定食も値段は同じだし、肉じゃがも好きだし、このままこれを食べてもいいんだけど…。
実は今日の晩ごはんは肉じゃがを作るつもりだったのだ。材料も全部買ってある。お昼に肉じゃがを食べて、夜も肉じゃがを食べるのはちょっと…。
私は目の前にある肉じゃがを食べるかどうか悩んだ。
ああ、でも、こんなことしていたら時間がどんどん過ぎて昼休みが終わってしまう。昼ごはんは肉じゃがを食べて、夜ごはんのことは後で考えよう。
肉じゃがはとてもおいしかった。
店を出るとき、時計を見ると12時50分だった。早く会社にもどらないと。
その日の晩ごはんはビーフカレーにした。
肉じゃがとほとんど同じ材料で作れるから。
晩ごはんもとてもおいしかった。
肉じゃがは、また今度作ろう。
文:牧友美子
画像:イラストAC/写真AC
(2026.01.30)