眠るジプシー女
La Bohemienne endormie by Henri Julien Félix Rousseau
1897, The Museum of Modern Art, New York
この絵は、フランス人画家、アンリ・ジュリアン・フェリックス・ルソー(1844年〜1910年)によって描かれました。ルソーは、長い間、パリで税関の職員として働いていました。ルソーは正式に絵の勉強をしたことがありませんでしたが、休みの日に趣味で絵を描いていました。そして、49歳で仕事を辞めて、画家になりました。
彼の作品には、熱帯のジャングルの動物や植物を描いたものが多く、不思議な雰囲気を作り上げています。しかし、彼は実際にジャングルに行ったことはなく、パリの植物園でスケッチした絵を想像でふくらませて描いていたそうです。
Dornac, Public domain, via Wikimedia Commons
ルソーの代表作の一つであるこの絵は、1897年ルソーが53歳のときに描かれました。ルソーはこの絵について、「マンドリンを弾く女性が、水を飲むビンとマンドリンをそばに置いて横たわっている。彼女は深く眠っている。ライオンが近づいているが、食い殺す気配はない。月の光がいい効果を与えている。背景は乾燥した砂漠だ。女性は中近東風の衣装を着ている」と話しています。
彼の説明の通り、満月の光は明るく、夜なのに女性の服の色やマンドリンの弦がはっきり描かれています。
ライオンのたてがみの毛も細かく、背景の山々もはっきりした線で描かれています。
ルソーの絵は「子どもが描いた絵」と言われるなど、専門家にはなかなか評価されませんでした。しかし、平面的でシンプルな形や鮮やかな色彩は、後の画家たちに影響を与えました。
ルソーはこの絵を故郷の町に寄贈しようとしましたが、ルソーの作品を評価していたのは一部の人たちだけだったので、受け取ってもらえなかったそうです。しかし、ルソーが亡くなった後、評価が高まり、現在はニューヨーク近代美術館(MoMA)に所蔵されています。
文:Naoko Ikegami
画像:ウィキメディア・コモンズ
(2024.10.25)