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鬼押(おにおし)温泉(おんせん)

(おに)()し出して、できた温泉(おんせん)

火山による災害(さいがい)自然(しぜん)(めぐ)みを考える

日本には、温泉(おんせん)の出る場所(ばしょ)源泉(げんせん))が(やく)2万7千か(しょ)もあります。こんなにたくさんの温泉(おんせん)が出るのは、火山の活動(かつどう)が主な原因(げんいん)です。世界で過去(かこ)1万年の間に噴火(ふんか)した火山の(かず)(やく)1500で、このうちの1(わり)ほどの111が日本に集中しているのです。火山の地下では、雨や(ゆき)がしみ()んでできた地下水が高温(こうおん)()けた岩石(がんせき)であるマグマによって(あたた)められ、温泉(おんせん)になります。関東(かんとう)の有名な温泉(おんせん)()の中でも、箱根(はこね)草津(くさつ)では数年前(すうねんまえ)に、近くの火山で大きな噴火(ふんか)が起こっています。火山は人間に温泉(おんせん)という自然(しぜん)(めぐ)みを(あた)えると同時に、多くの災害(さいがい)も生むおそろしいものです。今回(こんかい)は、その両方(りょうほう)について考えてみましょう。

冬は(ゆき)で「化粧(けしょう)」する(うつく)しい浅間山(あさまやま)

上の写真は、群馬県(ぐんまけん)長野県(ながのけん)の間にある浅間山(あさまやま)です。高さは2500m以上で、冬は多くの(ゆき)()るので、(とお)(はな)れた場所(ばしょ)からも、まるで山が化粧(けしょう)をしているような(うつく)しい風景(ふうけい)を見ることができます。浅間山(あさまやま)は、数十万年前(すうじゅうまんねんまえ)から活動(かつどう)(つづ)けている、世界でもめずらしい「活火山(かっかざん)」で、今から(やく)240年前に大きな噴火(ふんか)が起こり、関東(かんとう)の広い地域(ちいき)で死者が出る災害(さいがい)となりました。この時、噴火(ふんか)で出た(いわ)のかたまりや火山灰(かざんばい)がなだれとなって、住民(じゅうみん)が住む場所(ばしょ)(なが)れこみ、多くの人は()げることができませんでした。特に被害(ひがい)が大きかった群馬県(ぐんまけん)鎌原村(かんばらむら)現在(げんざい)嬬恋村(つまごいむら))は、なだれで(むら)全体(ぜんたい)()まってしまい477人が()くなりました。その時、生き(のこ)った人たちが()げたお(てら)が今も(のこ)っています。

火山の噴火(ふんか)で多くの人が()げこんだ鎌原観音堂(かんばらかんのんどう)

観音堂(かんのんどう)へと上る石段(いしだん)

鎌原観音堂(かんばらかんのんどう)」です。ここは、人々がふだん通る場所(ばしょ)から、(いし)階段(かいだん)五十段(ごじゅうだん)ほど上がった、少し高い場所(ばしょ)にありました。危険(きけん)が近づいた時に、多くの人が、この場所(ばしょ)に行って自分の()(まも)ろうとしたのでしょう。中にはもう少しのところで、間に()わなかった人もいました。数十年前(すうじゅうねんまえ)調(しら)べたところ、石段(いしだん)途中(とちゅう)()くなっていた2人が発見されたのです。今も(のこ)っている石段(いしだん)一番上(いちばんうえ)の15(だん)だけで、下のほうは噴火(ふんか)の時に土や(すな)()まったままになっています。お(てら)の近くには資料館(しりょうかん)もあり、この時の写真や資料(しりょう)を見学できます。

火山の噴火(ふんか)で下が()まった石段(いしだん)

石段(いしだん)の下を調(しら)べた時の写真

浅間山(あさまやま)噴火(ふんか)歴史(れきし)(つた)える嬬恋(つまごい)郷土(きょうど)資料館(しりょうかん)。秋には(うつく)しい紅葉(こうよう)(つつ)まれる

では、浅間山(あさまやま)で大きな噴火(ふんか)が起こった時に、まちのようすはどうなってしまったのでしょうか。それを実際(じっさい)にイメージできる場所(ばしょ)があります。嬬恋村(つまごいむら)にある「鬼押出(おにおしだ)(えん)」です。ここには、浅間山(あさまやま)噴火(ふんか)した時に(なが)れてきた多くの(いわ)溶岩(ようがん))がそのまま()かれています。広い場所(ばしょ)(なら)んだ大量(たいりょう)(いわ)は、とても大きなものや先がとがったもの、不思議(ふしぎ)(かたち)をしたものがあって、まるで芸術(げいじゅつ)作品のようです。

鬼押(おにお)(えん)には噴火(ふんか)の時に(なが)れてきた溶岩(ようがん)がある

浅間山(あさまやま)溶岩(ようがん)

(むかし)から浅間山(あさまやま)には(おに)が住んでいるという話があり、(やく)240年前の噴火(ふんか)(おに)(あば)れて(いわ)()し出したように見えたので、「鬼押出(おにおしだ)し」という名前がついたそうです。「鬼押出(おにおしだ)(えん)」はまわりを(うつく)しい景色(けしき)(かこ)まれた観光施設(かんこうしせつ)ですが、噴火(ふんか)の時のまま(のこ)った多くの溶岩(ようがん)には、(だい)自然(しぜん)のおそろしい力を(かん)じます。そして災害(さいがい)はいつ起こってもおかしくないという緊張感(きんちょうかん)を、私たちに(つた)えているようです。

鬼押出(おにおしだ)(えん)観光施設(かんこうしせつ)でレストランもある)

噴火(ふんか)()くなった人を(まつ)神社(じんじゃ)

さて、火山の噴火(ふんか)について学んだ後は、火山の(めぐ)みである温泉(おんせん)も体験しましょう。鬼押出(おにおしだ)(えん)のすぐ近くには、「鬼押(おにおし)温泉(おんせん)」という温泉(おんせん)があります。こちらは「(おに)」が()し出した温泉(おんせん)ではなく、人が機械(きかい)を使い地下を()って出た温泉(おんせん)です。それでも浅間山(あさまやま)から(とお)くない場所(ばしょ)にあり、火山の(ねつ)でつくられた自然(しぜん)のお()なので、本物の温泉(おんせん)(はだ)(かん)じることができるでしょう。

鬼押出(おにおしだ)(えん)の近くにある鬼押(おにおし)温泉(おんせん)。プールやエステを楽しめる場所(ばしょ)もある

鬼押(おにおし)温泉(おんせん)は「ホテル軽井沢(かるいざわ)1130」というホテルの中にあります。浅間山(あさまやま)火山岩(かざんがん)でつくられた露天風呂(ろてんぶろ)が、観光客(かんこうきゃく)に人気です。また、()まる部屋(へや)の中についている「客室(きゃくしつ)露天風呂(ろてんぶろ)」では、家族や友人で温泉(おんせん)()きなだけ楽しむことができるでしょう。(だい)自然(しぜん)(めぐ)まれた嬬恋村(つまごいむら)にはこのほかにも多くの温泉(おんせん)があり、宿泊(しゅくはく)と日帰りのどちらでも体験できます。

()まる部屋(へや)温泉(おんせん)がついている「客室(きゃくしつ)露天風呂(ろてんぶろ)

今回(こんかい)は、火山と温泉(おんせん)との(かか)わりについて考えてみました。日本は災害(さいがい)が多い国なので、過去(かこ)歴史(れきし)から自然(しぜん)のおそろしさを学び、心の準備(じゅんび)をしておくことは(つね)必要(ひつよう)でしょう。そして同時に、自然(しぜん)が人間に(あた)えてくれる(めぐ)みも知り、そこに(よろこ)びを(かん)じることができたらいいですね。

JR軽井沢(かるいざわ)の近く。ここから鬼押(おにおし)温泉(おんせん)までは、ホテルのバスが出ている

文:白石誠

写真:白石誠

(2024.4.23)

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