【鬼押温泉】
鬼が押し出して、できた温泉?
火山による災害と自然の恵みを考える
冬は雪で「化粧」する美しい浅間山
上の写真は、群馬県と長野県の間にある浅間山です。高さは2500m以上で、冬は多くの雪が降るので、遠く離れた場所からも、まるで山が化粧をしているような美しい風景を見ることができます。浅間山は、数十万年前から活動を続けている、世界でもめずらしい「活火山」で、今から約240年前に大きな噴火が起こり、関東の広い地域で死者が出る災害となりました。この時、噴火で出た岩のかたまりや火山灰がなだれとなって、住民が住む場所に流れこみ、多くの人は逃げることができませんでした。特に被害が大きかった群馬県の鎌原村(現在の嬬恋村)は、なだれで村の全体が埋まってしまい477人が亡くなりました。その時、生き残った人たちが逃げたお寺が今も残っています。
火山の噴火で多くの人が逃げこんだ鎌原観音堂
観音堂へと上る石段
昔から浅間山には鬼が住んでいるという話があり、約240年前の噴火は鬼が暴れて岩を押し出したように見えたので、「鬼押出し」という名前がついたそうです。「鬼押出し園」はまわりを美しい景色に囲まれた観光施設ですが、噴火の時のまま残った多くの溶岩には、大自然のおそろしい力を感じます。そして災害はいつ起こってもおかしくないという緊張感を、私たちに伝えているようです。
鬼押出し園は観光施設でレストランもある
噴火で亡くなった人を祭る神社
鬼押出し園の近くにある鬼押温泉。プールやエステを楽しめる場所もある
泊まる部屋に温泉がついている「客室露天風呂」
今回は、火山と温泉との関わりについて考えてみました。日本は災害が多い国なので、過去の歴史から自然のおそろしさを学び、心の準備をしておくことは常に必要でしょう。そして同時に、自然が人間に与えてくれる恵みも知り、そこに喜びを感じることができたらいいですね。
JR軽井沢駅の近く。ここから鬼押温泉までは、ホテルのバスが出ている
文:白石誠
写真:白石誠
(2024.4.23)