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(ぎゅう)たん()

仙台(せんだい)に旅行に来た人がよく食べる料理を知っていますか? それは「(ぎゅう)たん()き」です。(ぎゅう)たんは(うし)のタン(tongue)、つまり(うし)(した)です。

(ぎゅう)たん

(ぎゅう)たんは、海外ではシチューなどに使われます。日本では焼肉(やきにく)の「タン(しお)」があります。みなさんは食べたことがありますか?

タン(しお )

仙台(せんだい)(ぎゅう)たん()きは、タン(しお)とは(まった)(ちが)います。ここでは、その歴史(れきし)と作り方を紹介(しょうかい)したいと思います。
仙台(せんだい)(ぎゅう)たん()きができたのは、1945年に戦争(せんそう)(WWⅡ)が終わった(あと)のことでした。佐野啓四郎(さのけいしろう)さんという和食(わしょく)料理人(りょうりにん)がいました。佐野(さの)さんは戦争(せんそう)()けてしまった町で、()鳥屋(とりや)を始めました。しかし、まわりにも同じような()鳥屋(とりや)がたくさんありました。そこで、佐野(さの)さんは、ほかの店にはない特別(とくべつ)な料理が作れないかと考えました。

戦後(せんご)仙台(せんだい)のまち

そのようなときに、友人ゆうじんから「洋食屋でぎゅうたんを使った料理を出している」という話を聞きました。佐野さのさんは早速さっそく洋食屋へ行って、その料理を食べてみました。それがタンシチューでした。

タンシチュー

佐野(さの)さんはタンシチューを食べて、そのおいしさにおどろきました。しかし、タンシチューは3、4日煮込(にこ)んで作ると聞いて、そんなに時間をかけて作るのは無理(むり)だと思いました。
しかし、佐野(さの)さんは(ぎゅう)たんの味が(わす)れられません。なんとか別の方法(ほうほう)(ぎゅう)たんを料理できないかと考えつづけました。何度も牧場(ぼくじょう)へ行き、(ぎゅう)たんをもらってきては、いろいろな方法(ほうほう)(ため)してみました。そして、ついに(ぎゅう)たん()きを完成(かんせい)させたのです。
まず(ぎゅう)たんの(かわ)をむいて、やわらかい部分(ぶぶん)だけ()()ります。(つぎ)に、それを(うす)く切ります。それから(しお)をふってしばらく()かせておきます。こうすると、やわらかくて、しっかり塩味(しおあじ)がついたおいしい(ぎゅう)たんになるのです。そして、それを食べる前に炭火(すみび)()きます。炭火(すみび)()くことで(あぶら)()ちて、(すみ)のいい(かお)りがつくのです。

炭火(すみび)()いた(ぎゅう)たん

佐野(さの)さんが努力(どりょく)(すえ)完成(かんせい)させた(ぎゅう)たん()きは、仙台(せんだい)で広まりました。やがて東京(とうきょう)などから出張(しゅっちょう)で来た人たちの間でも人気が出ました。今では、仙台(せんだい)市内(しない)に100(けん)近く(ぎゅう)たん()きの店があります。

(ぎゅう)たん()きの

(ぎゅう)たん()きの店にはいろいろなメニューがありますが、一番(いちばん)人気があるのが「(ぎゅう)たん()定食(ていしょく)」です。定食(ていしょく)ですから、(ぎゅう)たん()きのほかにご飯とスープが()きます。ご飯は普通(ふつう)のご飯ではなく、(むぎ)が入った麦飯(むぎめし)です。スープはテールスープです。テール(tail)は(うし)のしっぽです。塩味(しおあじ)のスープにネギとやわらかく()たテールが入っています。これが(ぎゅう)たん()きによく()うのです。

(ぎゅう)たん()定食(ていしょく)

(ぎゅう)たん()定食(ていしょく)は1500円~2000円ぐらいです。普通(ふつう)定食(ていしょく)(くら)べると少し高いので、仙台(せんだい)に住んでいる人もよく食べるわけではありません。ほかの(けん)からお(きゃく)さんや友だちが来たときに、いっしょに食べに行きます。店によって(ぎゅう)たんの(あつ)さや味付(あじつ)けが(ちが)うのでいろいろ楽しめます。

あなたもぜひ仙台(せんだい)(あそ)びに来たら、(ぎゅう)たん()きを食べてみてください。きっと一度食べたら、また食べたくなるはずです。

<参考>

「仙台牛タウン」http://gyutown.com/about/history.htm
「元祖 味太助」https://www.aji-tasuke.co.jp/history.php

文:遠藤和彦
写真:宮城県観光プロモーション推進室/フォトAC

(2021.7.26)

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