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ハクソー・リッジ

『ハクソー・リッジ』(Hacksaw Ridge)という映画があります。2016年、アメリカでつくられた映画で、監督(かんとく)はメル・ギブソン、主演(しゅえん)はアンドリュー・ガーフィールドです。第二次世界大戦中(だいにじせかいたいせんちゅう)沖縄(おきなわ)(たたか)った兵隊(へいたい)デズモンド・T・ドスの体験(たいけん)をもとに制作(せいさく)されました。タイトルになっているハクソー・リッジは、日本の地名(ちめい)では「前田高地(まえだこうち)」と、()ばれる場所(ばしょ)です。(するど)く切り立った(がけ)様子(ようす)が、ハクソー、つまり「弓鋸(ゆみのこ)」に()ていたため、この()がついたそうです。主人公(しゅじんこう)のデズモンドは、セブンスデー・アドベンチスト教会(きょうかい)敬虔(けいけん)信者(しんじゃ)でした。(かれ)教会(きょうかい)(おし)えを(まも)り、武器(ぶき)を持って(たたか)うことを拒否(きょひ)しました。けれども、アメリカのために(はたら)きたいと考え、兵隊(へいたい)として(はたら)き、多くの人の(いのち)(すく)いました。米軍(べいぐん)(アメリカ(ぐん))の兵士(へいし)だけでなく、多くの日本人も(すく)ったといいます。
映画の舞台(ぶたい)となったハクソー・リッジ、つまり前田高地(まえだこうち)は、浦添城(うらそえじょう)(あと)にあります。標高(ひょうこう)が148mもあり、浦添市(うらそえし)(もっと)も高い場所(ばしょ)です。谷底(たにそこ)からの高さは90mもあります。切り立った(がけ)(おそ)ろしさが想像(そうぞう)できます。沖縄本島(おきなわほんとう)上陸(じょうりく)した米軍(べいぐん)は、1945年4月25日に前田高地(まえだこうち)攻撃(こうげき)しました。前田高地(まえだこうち)からは、那覇(なは)にある日本軍(にほんぐん)司令部全体(しれいぶぜんたい)を見ることができました。米軍(べいぐん)沖縄戦(おきなわせん)()つためには、前田高地(まえだこうち)()必要(ひつよう)がありました。(かれ)らは前田高地(まえだこうち)頂上(ちょうじょう)(うば)うため、必死(ひっし)(たたか)いました。最初(さいしょ)のうちは、(がけ)の上で待っていた日本軍(にほんぐん)からの攻撃(こうげき)()け、死傷者(ししょうしゃ)が出ました。両軍(りょうぐん)は、頂上(ちょうじょう)(うば)うため、(たたか)いました。日本軍(にほんぐん)洞窟(どうくつ)陣地(じんち)()き、必死(ひっし)抵抗(ていこう)します。しかし、5月6日、米軍(べいぐん)前田高地(まえだこうち)()ちました。この(たたか)いは一般市民(いっぱんしみん)()()まれ、浦添(うらそえ)住民(じゅうみん)が4000人も()くなっています。本当(ほんとう)(はげ)しい(たたか)いだったのです。
ハクソー・リッジ
浦添大公園(うらそえだいこうえん) (みなみ)エントランス管理事務所(かんりじむしょ)
現在(げんざい)前田高地(まえだこうち)(しず)かな場所(ばしょ)です。見晴(みは)らしがよく、ここで(はげ)しい(たたか)いがあったとは(しん)じられないほどです。けれども、(たし)かに、米軍(べいぐん)日本軍(にほんぐん)がお(たが)いを攻撃(こうげき)()ったのです。周辺(しゅうへん)にある洞窟(どうくつ)にたくさんの日本人が()げました。そこに(かく)れて、火炎放射器(かえんほうしゃき)による攻撃(こうげき)から()げたのです。(くる)しみながら、()くなった(かた)も多くいますし、()()びることができても、戦争(せんそう)記憶(きおく)(くる)しんでいる人もいます。
前田高地(まえだこうち)は今もなお、なぜ人は(たたか)うのかについて、(ふか)く考える場所(ばしょ)になっています。

文:三浦暁子・写真:三浦暁子 他(2021.4.1)

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